ラジオのある暮らし

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20年以上前に買った、1台のラジオ。
色を塗り替えることを前提に買ったものだ。
僕はもとのグレーをブルーとアイボリーに塗り直した。

昨夜そのラジオをふと手にとりスイッチをONにしてみた。
すると飾り気のまったくない、平面的な乾いた音が流れてきた。

今夜もチューニングは昨夜のままにしてあった。
そうしてふたたび僕はスイッチをONにした。

その番組は午前0時きっかりにはじまった。
音楽とゆっくりとした簡潔な語り意外は何もない。
その声の向こうにうっすら知性を帯びた艶が宿っている。
僕は女性の声に奥行きを感じた。

起伏のない50分の番組は
いつ始まって、いつ終わったかわからないほどだ。
それほどに深夜の時間の流れに緩やかに寄り添っている。

「はじまったばかりの一日があなたにとって素晴らしい一日でありますように」
女性はそう言って静かに番組を終えた。

そうだ。いまは新しい一日と新しい月がはじまったばかりだ。
僕からもあなたへ。
「はじまったばかりの10月があなたにとって素晴らしい月でありますように」

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