222ページは「パッシング・スルー」だった。

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さきほど仕事を終えて近所のカフェに本を読みに行った。
僕が20代に買って読んでいたこの本を持って。

つい最近、仕事で読み返す必要があったこの本は
もう30年前に文庫として出版されたものだ。
白かった紙がいまでは茶色くなってしまっている。
時間が経過したことを感じ取ることはとても容易だ。

その経過した時間がときとしてイマに顔を出すことがある。
ほら、日焼けと時間が堆積しその封じ込められた匂いが
一気にイマに噴出するあれだ。

薄暗いこのカフェの席のそばにはネコヤナギが飾ってあった。
会話を楽しむにふさわしい照明は、本を読むには少し暗すぎた。
そんな僕の様子を見て女性スタッフが
スポットライトの位置をこっちに変えてくれた。
そうしてしばらくまた僕はページをめくった。

ここに写っているのは30年前の時間とイマの時間だ。
しかしそのふたりは僕の前を「パッシング・スルー」していくのだ。
せっかくこうして出会ったふたりだというのに。

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